名古屋芸術大学を選んだ理由は?
小学生の頃から中学・高校にかけて、約7年間不登校で引きこもりの生活を送っていました。学校が嫌いというわけではなく、外に出ると体調を崩してしまうため、通学が難しかったのです。大学進学はほぼ諦めていたのですが、母の勧めでオープンキャンパスに参加したことをきっかけに、芸術教養リベラルアーツコースを受験し、なんとか入学することができました。大学の初日には「何があっても卒業する」と親に宣言しましたが、最初のうちは通うだけでも体調が優れない日が多かったです。それでも少しずつ挑戦を重ね、今に至っています。
所属しているコースで、一番力を入れている事は?
リベラルアーツコースでは、芸術教養を幅広く学ぶなかで「能楽」に特に興味を持ちました。入学後、一人で外に出られるようにはなりましたが、自己紹介すら緊張して大変でした。そこで、話し方講座や落語など、人と関わる機会を増やすうちに、自然と「能学」への興味が深まっていったんです。
現在は、デザイン研究科のライフスタイルデザイン研究に進み、これまで学んだことを活かして「大念佛狂言」とその変化を探究しています。伝統芸能を新しい視点で見つめ直すことで、自分なりのアプローチを築いているところです。
将来の夢や目標はなんですか?
大学4年生になって将来を考えたとき、大学院進学はほとんど“一か八か”のような気持ちでした。もし受からなかったら23歳までなら能の役者になるカリキュラムもあるし……と。
とはいえ、芸術教養領域には大学院がないため、先生に相談してみたところ、今の研究に近いテーマで学べそうなライフスタイルデザイン研究のライフスタイルデザイン研究科へ進むことになりました。結果的に受かって本当によかったと思っています。大学入学以前は、数メートル先へ出ることすら難しかったのに、いまは自分から行動できるようになりました。そう考えると、30歳までに何かしら形を作れればいいなと、前向きに考えられるようになったんです。
いま興味がある事や、ハマッている事は?
「大念佛狂言」は、私にとってほとんど唯一の趣味といえるほど大きな存在です。院生になって授業数が減ると、毎日ひたすら資料を探しては分析を重ねるという2年間を送りましたが、本当に楽しくて夢中になれました。
京都を中心に伝わるこの民俗芸能は、みんなでお経を唱える様子が狂言として舞台上で演じられる独特の形式を持ち、約1000年の歴史があるといわれています。
研究を深めていくうちに、最終的にはお坊さんの前で講演する機会までいただきました。
この大学をめざしている後輩にメッセージを!
私にとって大学は、学内だけで完結する場所ではなく、外での活動や経験と結びつくことで、学びが一段と楽しくなりました。いろいろなことに興味を持って調べるうちに、実際に能を行っている団体へインタビューをしに行くなど、大学の枠を越えて世界を広げると、さらに興味の幅が広がり、新しい発見や出会いもたくさんありました。もともと関心のなかった物事でも、「なぜこんなものがあるんだろう?」と考えることで新しい視点が生まれ、そうやって見方が増えていくと、人生がもっと面白くなると思います。