アニメ作品を

印象づける

「色」へのこだわり。

その原点は、大学時代に

油絵で培った色彩感覚。

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PEOPLE059
西村 由美子YUMIKO NISHIMURA
芸術学部 芸術学科
美術領域
洋画コース 1998年度卒業
(旧美術学部絵画科洋画コース)
株式会社スタジオジブリ 広報部
愛知県出身
Q

これまでの経歴と、現在の仕事内容を教えてください。

デジタルペイントに携わったのち、広報の仕事を担当しています。

スタジオジブリに入社して約2年半は制作チームに所属し、『千と千尋の神隠し』などのデジタルペイントに携わりました。今では当たり前のデジタルペイントですが、1999年当時はまだ草創期。大学で勉強したわけでもなかったし、使用するソフトの言語は英語のみで、必死で技術を覚えました。

その後、広報に異動になって、今に至ります。物静かで、絵を描くことで自分を表現するタイプの人が多い制作チームの中で、私はおしゃべりだったんです(笑)。それが広報に抜擢された理由かな、と思っています。

広報部は、一般のお客様からマスコミまで、あらゆるお問い合わせに対応するスタジオの窓口。映画公開時には配給会社と連携して、使用する映像や静止画を用意したり、映像の使い方や印刷物の仕上がりチェックなども行います。

私はデジタルペイントの経験があることからビジュアル面を担当し、特に色味に関してはこだわりを持って仕事をしています。私自身が、スタジオジブリ作品の色彩に魅せられてこの世界に憧れたように、色彩はその作品を印象づける大切な要素だからです。

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Q

名芸を選んだ理由は何でしたか?

いろいろな手法で、「絵を描く」ことを試してみたかったから。

中学時代からマンガ家志望だったのですが、「絵を描く」ということに対して、もっといろいろな手法を試してみたいと思って名芸に進学しました。専攻は洋画でしたが、デザインや彫刻、焼き物までさまざまなカリキュラムがあり、有意義な経験になったと思います。

スタジオジブリのアニメーションと出会ったのは、大学1年の時。原作を愛読していた『耳をすませば』が映画館で公開されたんです。白黒の静止画で表現されたマンガとは違い、色とりどりに彩られたキャラクターが息吹を吹き込まれ、いきいきとダイナミックに動く…。その鮮やかな世界観に衝撃を受けましたね。

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Q

最も役に立った大学時代の経験や学びは?

油絵を通して身につけた色彩感覚だと思います。

私が色彩に対する感覚を養ったのは、やはり名芸で学んだ油絵だと思います。色を重ねたり、表面を削ることで下地の色が出てきたり…。制作過程で変化していく独特の色味が楽しくて、夢中で描きました。

今は自分が手を動かすことはありませんが、大好きなスタジオジブリの作品に携わり、美しい色彩を日本中、世界中の人に見てもらうことができる。そんな幸せとやりがいを日々感じています。

Q

いま興味があることや、ハマッていることは?

地元から取り寄せた豆で、おいしいコーヒーを淹れること。

愛知県の実家の近くに、帰省したら必ず足を運ぶ大好きな自家焙煎コーヒーのお店があるんです。もう何年もそこから豆をお取り寄せしていて、家でも職場でも楽しんでいます。自分で豆を挽いて、丁寧にドリップして淹れたコーヒーが一番おいしい。監督が時々ふらっとやってきて、「コーヒー淹れてください」と言われることもあります。

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Q

この大学をめざしている後輩にメッセージを!

「自分が表現したいもの」を見つけて、磨き続けてください。

私の大学生活は「こうしなさい」「これじゃないといけない」という枠組みがなかったので、自分を見失ってしまう時も多々ありました。でもこれは、名芸に限らず誰もが経験すること。自分がやらなかったらそれなりだし、努力したことは後から必ず自分にかえってきます。

芸大は個性あふれる魅力的な人が多く、刺激を受けることもあれば、圧倒されて自信や勇気を持てなくなる時もあると思います。実際に私もそうでした。でも、「自分自身は何を表現したいのか」という軸ができれば、どんな道へ進んでも続けていけるもの。私にとって、それは色彩であり、形を変えながらも好きなことに打ち込んでいるという実感があります。